somewhere sometime
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「ああ…大丈夫だ、子龍。心配してくれてすまないな。
ありがとう、大丈夫だ。
明日は…分かった。
もう休んでくれていい。ありがとう。」
ピッ
「…ふう。」
「まさかお前がくるとは思わなかったよ…。
凌統…。」
ピッ
「……ああ、馬超か。夜分にすまない。
明日よろしく頼む。
…いや、それだけじゃないんだ。
頼みたいことがある。」
#######
「…ん…。」
眼を覚ますと、見知らぬ天井が目に入る。
凌統は、しばらくぼんやりとした表情をした後。
がばり、と体を起こした。
「…え…?」
(どこだ、ここは。)
全く知らない部屋だった。
だが、服は着ている、見なれた自分の寝間着だった。
(…とりあえず既成事実云々は…ない…よな。)
隣に裸の女もいないようなので、一応はほっとする。
だが、完全には安心できない。
そう思いながら周りを見回してみた。
独り暮らしだろうか、シンプルだが趣味のいい住まいだった。
友人の家ではない。
(マジ…どこにいるんだ?オレ。)
そこまで思った時、凌統の居る寝室のドアが開いた。
そこにいたのは。
「起きたか。凌統。」
「え…?!りゅ、劉備さん…?!
何で…。」
眼に入ったのは、昨日自覚したばかりの片想いの相手だった。
どうやら自分の着替えを持ってきてくれたようだ。
だが、凌統はそれでどころではなかった。
パニックを起こしかかっていた。
まさか、不埒な行いをしてはいないとは思うが、だが…。
「なんだ覚えていないのか?
昨日あの公園をフラフラと歩いてきただろう。」
言われた言葉に、凌統はまったく覚えがないことを自覚した。
「…はい。」
「そうか。」
劉備は驚いた顔もせずに手に持っていた服を凌統の傍に置いた。
「ひどい頭痛もあったようだが…それも覚えてないのか?」
「頭痛…?」
頭痛、と聞いて凌統の記憶が少し戻った。
(そういえば…一度起きて…確か…変な…夢を見て…。)
「…あ、「無理に思いださなくともいい。」」
何かが浮かびそうになったとき、劉備の強い口調が思考を妨げた。
凌統にとっては初めての強い言葉だった。
『思い出すな』とでも言うように。
「劉備さん…?」
「まあそれより一度病院で診てもらった方がいいだろう。
頭痛を甘く見るものではないからな。」
劉備はにっこりと笑いかけた。
「それから、それは着替えだ。」
「あ…すみません、…えっと…。」
「心配しなくとも、私のものではないぞ。
そなたの長身に合う服など持ち合わせていないからな。」
「あ…そう、ですか。」
そう聞いて、正直に安心していた。
劉備の身長はけして低い方ではないが、凌統から見れば見下ろすほどのものだ。
流石に服は借りられない。
(…っつーか、俺…寝間着で出てきたのかよ…。
マジで大丈夫か…?)
凌統は自らの身に起こった出来事に、今更ながら戸惑っていた。
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「父上!!尚香の縁談が決まったとお伺いしましたが、本当ですか?!」
「どうした権、そんなに慌てて。
妹を取られるなどと思うお前ではなかろうに。」
「そうではございません…!が…。
あの…相手の名をお聞きしたいが、よろしいか?」
「ああ、かまわないが。
お前の義弟になる男だ、いずれは仲良くせねばなるまい。
まあ義弟といっても、お前よりずいぶんと年は上になるが…。」
「…年が、上…?」
「ああ、正直なところを言うと、最初はだいぶ無理があると思っていたのだ。
だが尚香が存外乗り気になってな。はは、あのじゃじゃ馬が驚いたことに一目ぼれでもしたようだったぞ。」
「……。」
「お前も知っていよう。蜀グループの総裁だ。
劉備玄徳。なかなかの男だぞ?」
「…なん、ですと…。」
権は驚き、そして。
やはり、と悲しげな顔をした。
また繰り返すのだろうか
と 小さくつぶやいて。
To be Continued…
2か月半ぶりに更新ですー;;
やっとこさパパと権くんも登場。まだまだ人は増えますね;;
さてうっかり劉備さまのおうちで一夜を過ごした凌統くん。
怖いお兄さんたちはそれを知ったらどうするのかな?(笑
もうすぐレッドクリフpart2が公開ですね。
尚香ちゃんも大活躍だし、楽しみです。